引越しのトラブル
引越しの傷は、あとから「前からあった」と言われやすい——国民生活センターは、作業の前後を写真や動画で残すよう書いています
荷物を運び終えて、作業員が帰ったあと。新しい部屋で段ボールを開けていくと、たんすの角に見覚えのない傷があることに気づきます。
前の部屋の廊下はどうだったか、と思い返しても、はっきりとは覚えていません。電話をかけてみると、「もとからあった傷ではないですか」と言われてしまう。
引越しの傷は、こうしてどちらのせいか分からないまま話が止まりがちです。運んだ人も住んでいた人も、作業の前の状態を並べて見せることができないからです。
キャンセル料の決まりは、最初の記事で国土交通省の標準引越運送約款から読みました。住民票の届出の期限は、2本目の記事で住民基本台帳法から読んでいます。
この記事では、作業の当日とその前後に、何をしておくとよいと国民生活センターが書いているかを扱います。
開いたのは、国民生活センターの「引越トラブルにご注意」(2026年2月4日公表)の頁と報告書本文、それに相談件数をまとめた「引越サービス」の頁です。どれも2026年9月27日に読んだときの文を引きます。
・引越サービスの相談は、破損・紛失や料金に関するものがみられる
・引越後に傷に気づいても、引越でついたものと特定しづらいと、報告書は書いている
・アドバイスの1つは、引越前後の状況を写真や動画で記録しておくこと
・持ち運べる貴重品や大事な物は、事業者任せにしないよう書いている
・見積りの時点で段ボールを受け取るときは、取扱いを確かめるよう書いている
引越しの相談は、どれくらい寄せられているの?
引越しで揉めるのは、よくあることなの?
「引越サービス」の頁は、2026年7月31日の更新でした。冒頭の一文はこうです。
引越荷物を運ぶ「引越サービス」に関する相談では、作業中に荷物を破損・紛失されたといった相談や、料金に関する相談などがみられます。
頁の表では、PIO-NET に登録された相談件数が、2023年度 2,128件、2024年度 2,344件、2025年度 2,703件でした。件数は2026年5月31日現在で、消費生活センター等からの経由相談は含まれていない、と注があります。
傷は、なぜ揉めやすいの?
壊されたのは確かなのに、なぜ話が進まないの?
報告書の事例1は、賃貸マンションからの引越しでした。廊下や階段、床やドアに傷が多数でき、申し出ると担当者に次のように言われた、という相談です。
引越で傷ができたとは限らない。初めから傷があったのでは
この事例から見える問題点として、報告書が最初に置いたのが次の一文です。
引越後に傷や故障に気づいても、それが引越に起因するものであるということを特定しづらい。
同じ節は、片付けや手続きに追われて気づくのが遅れると、申し出ができる期間(3カ月)を過ぎてしまうことがある、とも書いています。この3カ月は、報告書の脚注で標準引越運送約款第25条とされていました。
作業の前後に、何を残せばいいの?
あとで揉めないように、自分でできることはある?
アドバイスの4つ目が、この話です。
引越作業の前後の状況を写真や動画で記録しておくことで損害発生時に交渉がスムーズに進むことがあります。
続く文が挙げるのは、時間が経つほど確かめにくくなる、という点です。
とくに時間が経つと傷の状態や原因について確認が難しくなることが多いため、写真や動画で記録を取っておくとともに、問題に気づいたら、できるだけ早く引越事業者に申し出ましょう。
事例1で傷が入ったのは、運んだ荷物ではなく、廊下や階段のクロス、床やドアでした。相談になっていたのは、荷物の傷だけではなかった、ということです。
大事な物は、どうすればいいの?
壊れたら困る物も、全部まかせてしまっていい?
同じアドバイスの中に、次の一文があります。
また、引越時も持ち運べる貴重品や大事な物は引越事業者任せにせず、包装や運搬を自身ですることや作業風景を見守ることでトラブルを未然に防ぎましょう。
事業者の責任についても、報告書は約款の考え方を添えていました。荷物の受取から引渡しまでの間に損傷などが生じた場合、事業者が注意を怠らなかったことを証明しない限り、損害賠償責任を負うとされている、という内容です。脚注では標準引越運送約款第22条とされていました。
見積りのときに、段ボールを置いていかれたら?
見積りに来た業者が、段ボールを置いていった。契約しなかったらどうなるの?
「引越トラブルにご注意」の頁に載る相談事例の1つは、次のものです。
複数の引越事業者から見積りを取った際、段ボールを置いていった事業者がいた。その事業者と契約しなかったところ、段ボールをこちらの費用負担で返送するよう言われた。
これに対するアドバイスは、次のとおりです。
契約締結前に段ボール等の資材の提供を受ける際はその取扱いを確認しましょう。
報告書は、本来は段ボールを置いていく時点で、返送するときの費用を説明する必要がある、とも書いていました。見積りに料金がかかるかどうか、キャンセル料がいつからかかるかは、最初の記事で約款から読んでいます。
この記事で確認したこと
・相談件数は2023年度 2,128件、2024年度 2,344件、2025年度 2,703件(2026年5月31日現在)
・引越後に傷に気づいても、引越でついたと特定しづらい
・申し出ができる期間(3カ月)を過ぎてしまうことがある(報告書の脚注で約款第25条)
・作業の前後の状況を写真や動画で記録し、気づいたら早く申し出る
・持ち運べる貴重品や大事な物は、事業者任せにしない
・契約前に段ボール等を受け取るときは、取扱いを確かめる
よくある質問
傷に気づいたら、まずどこに言えばよいですか
報告書は、問題に気づいたら、できるだけ早く引越事業者に申し出るよう書いていました。不安なときやトラブルになったときは、消費者ホットライン「188」から最寄りの消費生活センター等を案内してもらえる、とも書かれています。
引越しのあとの役所の手続きは、いつまでですか
転入や転居の届出の期限は、2本目の記事で住民基本台帳法から読んでいます。今回の国民生活センターの頁は、役所の手続きには触れていませんでした。
見積りの電話で、ほかのサービスも勧められました
報告書は、見積りのときにウォーターサーバーやインターネット回線などを勧められるケースもあり、本当に必要なものかを冷静に検討するよう書いていました。
この整理が変わる条件
- 国民生活センターが、今回の頁や報告書を改めた場合(本記事は2026年9月27日に読んだもの。「引越サービス」の頁は2026年7月31日の更新)
- 標準引越運送約款が改正された場合(第22条・第25条は、報告書の脚注に書かれた条番号として引いている)
- 契約する事業者が、独自の約款を使っている場合
出典
- 国民生活センター「引越トラブルにご注意」(2026年2月4日公表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260204_1.html
- 国民生活センター「引越トラブルにご注意」報告書本文(PDF) https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20260204_1.pdf
- 国民生活センター「引越サービス」(各種相談の件数や傾向・2026年7月31日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/hikkoshi.html
荷物を出す前に、部屋と通り道を一度撮っておくと、あとで並べて見せられます。
上の出典を引いて確かめた日: